私が好きな坂本龍一10選
第22回
真鍋大度
アーティスト、プログラマ、DJ
教授、この度はお誕生日おめでとうございます。
いつも気さくに優しくして頂き、そして沢山のチャンスを与えて頂き、感謝の意を言葉で伝えるのは難しいのですが、感謝、そして敬愛しております。
私が教授と初めてお会いしたのは2007年、山口情報芸術センター(YCAM)で行われた高谷史郎さんと教授のコラボ作品、”LIFE—fluid, invisible, inaudible”の制作現場でした。
私は映像ソフトの開発担当でエンジニアとして参加していましたが、
”教授本人が山口に来てる。サウンドチェックはAOKI TAKAMASA君の楽曲プレイするんだ!”
などなど、、、教授が作業をしている姿をこっそり観察して心の中で大興奮しておりました。
作品公開後に”また何か一緒にやろう”と、教授が握手をしながらおっしゃってくださったのを、今でも覚えています。とても幸運な機会で、まだまだ前途多難で将来に不安があった自分には大きな励みになりました。
当時も、今現在も教授は自分にとっては敬愛する憧れの存在以外の何者でもなく、プロジェクトでご一緒出来ることになった時の興奮と緊張は今でも忘れられません。その後も、コラボレーション作品を世界各国で発表させて頂く機会に恵まれ本当に幸運だとつくづく感じております。
現在も重要なプロジェクトに関わらせて頂いており、そしてまだ未完成の状態なのでこちらの楽曲をセレクトすることも恐縮なのですが、僭越ながら以下10曲を選ばせていただきました。
1
UOON I, UOON II
2
AURORA
音響 × ピアノの新境地を切り開いた歴史的なアルバムVRIOON、そしてINSENからの楽曲です。
サラリーマン、失業保険生活を経たのちサウンドアートを学ぶため岐阜の情報科学芸術大学院大学[IAMAS]という学校へ進んだのですが、当時学内で大人気で、毎日の様に聴いていました。
Alva Notoのピアノのサスティン(持続音)をエディットするセンスとプリミティブな電子音をピアノに融合するテクニックを堪能出来る一枚です。初期のコラボレーションということで、Alva Notoのエディットは少し控えめな印象も感じられますが、そこがまた繊細で良い緊張感を生み出しています。サウンドは実験的な印象もありつつも終始美しく、ラウンジイベントのDJでも重宝していました。
Alva Notoと教授、お二人のコラボレーションは何度か拝見していますが、バルセロナのソナーフェスティバルのクロージングで行われたコンサートはとても印象的でした。The Teatre Grec of Barcelonaの建築と自然、教授のピアノ、Alva Notoの電子音の融合が大熱狂のパーティーのエンディングにふさわしく、あの光景は今でも目に焼き付いています。
N-051
VRIOON (REMASTER)
ALVA NOTO + RYUICHI SAKAMOTO
1. UOON I
2. UOON II
3. DUOON
4. NOON
5. TRIOON I
6. TRIOON II
7. LANDSCAPE SKIZZE
楽曲解説
2002年にリリースされた坂本龍一とアルヴァ・ノトのコラボレーション・アルバム『VRIOON』の冒頭のメドレー。両曲あわせて23分を超える大作のアンビエント作品となっている。
N-052
INSEN (REMASTER)
ALVA NOTO + RYUICHI SAKAMOTO
1. AURORA
2. MORNING
3. LOGIC MOON
4. MOON
5. BERLIN
6. IANO
7. AVAOL
8. BARCO
楽曲解説
2005年にリリースされたアルヴァ・ノトとのコラボレーション・アルバム『INESN』に収録された1曲。坂本龍一のピアノとアルヴァ・ノトによる電子音、グリッチ・ノイズが融合した作品。アルバム『INESN』は日本未発売で、CDも入手が難しくなっていたが、2022年8月にボーナス・トラック収録のリマスターCD、LPが発売された。
3
Perspective
4
MUJI2020
5
Before Long
2020年の年末に行われた一夜限りの無観客オンラインピアノコンサート。
僕は映像のディレクションをやらせて頂いていたこともあり、特に思い入れのあるコンサートなのですが、その中から敢えて選ぶとしたらこちらの楽曲。
ピアノの持続音や間をじっくり味わえる優しく美しい演奏に、コロナ禍で疲れた心を癒された方も多かったのではないでしょうか。
オンラインで視聴された方からからは想像もつかないかもしれませんが、本番はグリーンバックスタジオで演奏環境。教授にはご無理をお願いしてしまいました。。映像のためとはいえ心苦しかったです。しかし、そんな中でも素晴らしい音色をお届けする教授に尊敬の念を抱かざるを得ません。
RZCM-77479
Playing the Piano 12122020
坂本龍一
1. Andata
2. Bibo no Aozora
3. Aqua
4. Aubade 2020
5. Aoneko no Torso
6. Mizu no Naka no Bagatelle
7. Before Long
8. Perspective
9. Energy Flow
10. The Sheltering Sky
11. The Last Emperor
12.The Seed And The Sower
13. Merry Christmas Mr. Lawrence
14. MUJI2020
15. Improvisation - 20201212
楽曲解説
Perspective
1983年にリリースされたイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のアルバム『SERVICE』に収録。印象的な美しいピアノに乗せて日常の風景を淡々と歌うヴォーカル曲。YMOでの発表に先駆けて、1983年秋のピアノ・ソロ・コンサートで初披露された。YMOのほかソロ・コンサートでも度々演奏され、最新の演奏はライヴ・アルバム『Playing the Piano 12122020』で聴くことができる。
MUJI2020
2020年に無印良品のコマーシャル「気持ちいいのはなぜだろう」のために制作した楽曲。スタジオ・ヴァージョンはボックス・セット『2020S』に収録。ライヴ・アルバム『Playing the Piano 12122020』でライヴ・ヴァージョンを聴くことができる。
Before Long
1987年のアルバム『NEO GEO』に収録された楽曲。これまで多くのコンサートで演奏されてきたほか、ピアノ・ソロ、ピアノ・トリオなどでも編曲されてきた。最新の演奏はライヴ・アルバム『Playing the Piano 12122020』で聴くことができる。
6
AS PRAIAS DESERTAS
当時、何故このアルバムを買ったのか良く覚えていないのですが(タワレコでオススメだったとかそういう感じだと思う)とにかく良く聴いてました。若い頃からHiphopやJazz, FunkなどBlack Musicばかり聴いていたこともあり、CASAが初めてじっくり聞き込んだ教授のアルバムかもしれません。 サラリーマンをやめて失業保険をもらいながら生活していて未来が見えず、精神的にも経済的にも非常に不安定な時期だったと思うのですが、このアルバムを聴いて救われていた様に思います。とにかく美しい一枚。
WPC6-10145
CASA
MORELENBAUM2/SAKAMOTO
1. AS PRAIAS DESERTAS
2. AMOR EM PAZ
3. VIVO SONHANDO-DREAMER-
4. INUTIL PAISAGEM
5. SABIA
6. CHANSON POUR MICHELLE (inst)
7. BONITA
8. FOTOGRAFIA -Photograph-
9. IMAGINA
10. ESTRADA BRANCA
11. O GRANDE AMOR
12. CANCAO EM MODO MENOR
13. TEMA PARA ANA(inst)
14. DERRADEIRA PRIMAVERA
15. ESPERANCA PERDIDA-I WAS JUST ONE MOR FOR YOU-
16. SEM VOCE
楽曲解説
2001年にMORELENBAUM2/SAKAMOTO名義で発表されたアントニオ・カルロス・ジョビン作品のカヴァー集『CASA』の冒頭曲。アルバム全曲がジョビンの家でジョビンのピアノを使ってレコーディングされている。本楽曲は坂本龍一のピアノと、ジャキス・モレレンバウムのチェロ、パオラ・モレレンバウムのヴォーカルで構成されている。
7
undercooled
アメリカ同時多発テロ事件やイラク戦争といった背景の中制作された哀愁系Hiphop。 一度聴くと頭から離れないメロディ。Bricolagesに入っているGlitchyなAlva NotoのRemodelも好きです。民謡へと昇華した 、うないぐみ+坂本龍一「弥勒世果報 (みるくゆがふ)」も驚きと感動がありました。
WPCL-10072
CHASM
坂本龍一
1. undercooled
2. coro
3. War & Peace
4. CHASM
5. World Citizen - I won't be disappointed/looped piano
6. only love can conquer hate
7. Ngo/bitmix
8. break with
9. +pantonal
10. the land song - music for Artelligent City/one winter day mix
11. 20 msec.
12. laménto
13. World Citizen/re-cycled
14. Seven Samurai - ending theme
楽曲解説
2004年にリリースされたアルバム『CHASM』の冒頭曲。韓国のラッパー、MCスナイパーがラップを担当。また、サウンド・プログラミングは細野晴臣と高橋幸宏のユニットであるスケッチ・ショウが手掛けている。この曲は同年CDシングルとしても発売された。2011年1月に韓国ソウル・アーツ・センターで行われたピアノ・コンサートではMCスナイパーがゲストとして招かれて本曲を演奏。その模様はライヴ・アルバム『playing the piano in seoul / korea 2011』(2011)に収録されている。
8
Ngo/bitmix
オリジナルのボサノヴァバージョンも好きですが、bitmixは数あるグリッチ × ピアノ楽曲の中でも群を抜いて色っぽく、教授しか作り出せない楽曲ではないでしょうか。
唸るベースドラムと尖ったクリック音の中心で美しく鳴り響くピアノをリッチなサウンドシステムで聴くと心が震えますまた、Comb Filterが作り出すテクスチャが特徴的なBricolagesに入っているSlickerのRemixもオススメです。
WPCL-10072
CHASM
坂本龍一
1. undercooled
2. coro
3. War & Peace
4. CHASM
5. World Citizen - I won't be disappointed/looped piano
6. only love can conquer hate
7. Ngo/bitmix
8. break with
9. +pantonal
10. the land song - music for Artelligent City/one winter day mix
11. 20 msec.
12. laménto
13. World Citizen/re-cycled
14. Seven Samurai - ending theme
楽曲解説
2004年のアルバム『CHASM』に収録された楽曲。もともとはニュー・バンスのCMのために制作されたボサノヴァ風のトラックだったが、アルバムのためにエレクトロニカ・アレンジでリミックスされた。
9
MA MERE L'OIE
Hiphop界隈ではShowbiz (D.I.T.C.) やHavoc (Mobb Deep) などHiphopのレジェンドプロデューサーにサンプリングされていたことで知られる名曲。クラシック、映画音楽、ポップスのみならずUnderground Hiphopにも多大なる影響を与えたことを思い知らされる一曲です。
MDCL-1243
音楽図鑑
坂本龍一
1. TIBETAN DANCE
2. ETUDE
3. PARADISE LOST
4. SELF PORTRAIT
5. 旅の極北
6. M.A.Y. IN THE BACKYARD
7. 羽の林で
8. 森の人
9. A TRIBUTE TO N.J.P.
10. REPLICA
11. マ・メール・ロワ
12. きみについて
13. TIBETAN DANCE (VERSION)
楽曲解説
1984年のアルバム『音楽図鑑』のときにレコーディングされた楽曲で、当初は『音楽図鑑』のボーナス・ディスクに収録。その後、CDがリリースされた際にボーナス・トラックとして追加された。『音楽図鑑』の海外盤では「Zen-Gun」というタイトルに改題されていた。
10
Moving On
教授の中では珍しいレゲエ調のメロウな楽曲。この楽曲がリリースされた頃、僕はレストランが併設するナイトクラブでDJのアルバイトをしていたのですが、お客さんがフロアで踊る前のチルな時間帯でこの曲を毎日の様にプレイしていました。今でもシングルを大事に持ってます。
FLCG-3128
sweet revenge
坂本龍一
1. Tokyo Story
2. Moving On
3. 二人の果て
4. Regret
5. Pounding at My Heart
6. Love and Hate
7. Sweet Revenge
8. 7 Seconds
9. Anna
10. Same Dream, Same Destination
11. Psychedelic Afternoon
12. Interruptions
13. 君と僕と彼女のこと
楽曲解説
1994年のアルバム『Sweet Revenge』に収録された楽曲。女性ラッパーのJ-Me Smithをフィーチュアしている。この曲はアメリカとヨーロッパでシングル・カットされ、12インチ・シングル、CDシングルにさまざまなリミックス・ヴァージョンが収録されている。
余談ですが、私の表現のルーツの一つに教授と岩井俊雄さんのMPI X IPM (Music Plays Images X Images Play Music)があります。今回は音源ということでセレクト出来なかったのですが、自分だけでなくその後のオーディアルビジュアル、メディアアートに大きな影響を与えたプロジェクトとしてこちらに記述しておきます。
真鍋大度
アーティスト、プログラマ、DJ
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